どききゅあブログ

食べたものとか乗ったものとか、いろいろな日記です。

映画ふたりはプリキュア Splash☆Star チクタク危機一髪

レビュー、その3です。引き続き、ネタバレ注意。先は長いっス。

独断レビュー(3)

声のする方を見れば、橋の上に、青空と太陽を背にして男が立っています。
いかにもあやしげなBGMで、あやしさを倍増させていますが、明るい日の中にいるせいか、悪人という感じがしません。この段階では、不思議な雰囲気をもった男、という感じです。
咲と舞だって百戦錬磨。もし、いかにもあやしい男だったら警戒したでしょう。
もとより登場人物にはBGMは聴こえません。私たちがあやしいと思う男を、咲と舞はいぶかりもしません。せいぜい威圧感を感じる程度。
ですから、男の質問に、ふたりはすなおに答えます。
舞がトキタ時計店の名前を出し、咲がそれを肯定して道を教えます。咲は、自分たちが突っ切ってきた近道を教えようとしてから、ちゃんとした道を教えるのはご愛嬌。
これに対する男の「感謝」の言葉ですが、この瞬間、口のはしをゆがめて、はじめて悪人の顔を出しています。


男が去っていくのを言葉もなく見送るふたりですが、先に我に帰るのは咲。すぐに川を渡り始めます。
咲は、先を急ぐあまりに舞のおそれや躊躇に気付きません。舞の中には、それが不満となってたまっていきます。
文句を言う咲に、さすがにむっとした舞ですが、チョッピのことばでその表情は一瞬だけで終わります。咲がその表情を見ていたのか、それは画面の中で描かれていないので、はっきりしません。その前の場面でも次の場面でも、咲は舞のほうを向いていますが、台詞や咲の足踏みと思われる足音から推測すると、舞がむっとした瞬間だけはうしろ(目的地のほう)を向いていて、舞の表情に気付かなかった可能性もあります。咲が見ていないからこそ、舞はすなおに怒りの表情を見せた可能性もあります。
ここで、チョッピとフラッピが、ちょっとだけ嫌な気配がしたといいます。それが気になる咲は、それについて尋ねますが、舞はそれを無視して先を急ごうとします。かなり怒っています。
でも、咲の前を歩いているため、階段を上がる舞の表情は見えません。観客である私たちにも、その瞬間の舞がどんな表情なのか、わからないのです。でも、その直前の表情から、容易に想像が付きます。
怒っているのです。そして、怒っている顔を咲に見られたくないのです。ここから想像すると、さきほど舞がむっとした表情をした時は、やはり咲はうしろを向いていたのでしょう。
結局、舞のこの行動によって、あの男についての疑惑を追及することを放棄することになり、のちに大変な事態を招くことになってしまいます。
知らずに墓穴を掘っていく咲と舞。見ていてハラハラします。
ちなみに、チョッピとフラップが嫌な気配を感じたのは、男が「感謝」という言葉を発した瞬間だと思います。あの瞬間だけ、悪の顔がのぞいたということでしょう。


男は、トキタ時計店の古時計の前に立ち、「見つけたぞ、時計の郷への入り口を」とつぶやきます。
男の謎の力を受けて、11時2分を指していた時計は、一気に12時ちょうどまで進みます。12時というより0時と言ったほうが、このシーンとしては正しいのでしょうけど。


そして場面はかわって、スーパーの横のカラオケ大会会場。カラオケ大会の参加受付締め切り時間は過ぎているので、咲と舞は係の人にそこをなんとかと頼み込みます。
ここでは、必死にお願いしているのは咲だけで、舞はそれにつきあっているだけ、というのがかなり明確に出ています。なるべくそう見せないように努力している舞が、いじらしいです。
でも、咲は気付いているでしょう。咲のほうにもしだいに不満と不安が積み上がっていくのです。
とにかく、かわいい女の子ふたりに懇願されて、係のおじさんたちは心を動かされます。


浮かない表情の舞に、「よっしゃー!今日も絶好調なりー!」と手放しに喜ぶ咲。舞の浮かない表情は、咲がうれしそうに叫ぶ前からです。その台詞にだけ怒ったわけではなく、すでに不満はたまりにたまっているのです。
そして、ついに舞は切れます。
舞は、「寝坊したのにどうして絶好調なの」と咲をなじりますが、あいかわらず顔は咲と反対のほうを向いています。
この後のかみあわない会話も、ほとんど舞は咲と反対のほうを向いたまま。たまりかねた咲が舞の前に出るのと、舞がうしろを振り向くのが同時。このシーンが象徴的です。ひたすらかみあっていません。
かみあってはいないものの、どちらの言い分も正論。舞は、いままでため込んだ分を、ここで全部吐き出しています。だから、こじれるこじれる。吐き出すぐらいならためこまなければいいのに、結局相手に甘えているのだと思います。
咲のほうは不満というより不安です。自分だけが突っ走ってしまったのではないかという不安。舞がついてこない不安。実際、この時点での舞は、咲についていけなくなっています。
口論するふたりに、健太が割って入ります。この時の咲と舞の表情が絶妙。健太に対して作り笑いをするまで、だんだん変わっていく表情が、ちょっとずつタイミングがずれているもののほとんど同じ。咲と舞は、こういうところがすごいですね。
健太に「デュエットはふたりの呼吸が大事」という重要な言葉を言われた後の咲と舞の困惑の表情が、これまた同じ。本当に息があっています。